前店舗の明け渡しから、わずか1週間で新しいお店を開店!

一般的に、店舗を開業するときは、その準備期間として1〜3ヶ月程度かかるといわれている。内装工事をして、必要な設備機器をいれるなどしていると、その費用だけでなく、時間もかかる。もちろん、準備期間は売り上げはたたないが、家賃はかかる。
しかし、短期間で、低コストで店舗を開業できる方法があることをご存知だろうか。
実際に1週間の準備で店舗を開業した田口さんにお話をうかがった。

居酒屋「具満たん」、東京ドーム近くにオープン

具満たん 水道橋店は、JR線水道橋駅西口徒歩1分。

おいしい宮崎地鶏を、東京ドームの近くでリーズナブルで食することのできる居酒屋がある。
そのお店の名は「具満たん」

JR線水道橋駅の西口を出て、右に行くと後楽園遊園地や東京ドームがある。左に行くと、すぐ向かいに「具満たん」の大きい看板が見える。1階には立ち食いそばがあり、その脇の階段をあがると間口一間ほどの入り口に突き当たる。

店内はいかにも居酒屋といった感じで、2階にはテーブル席と座敷席、3階は座敷のみで50名ほどの大宴会ができる。

このお店のウリは、飲み放題つきで3500円のコース。
都心の駅前で、料理8品・飲み放題つきで3500円、お料理のみで2300円はあまりない。
ドリンク類はビール(モルツ)から焼酎、日本酒、果実酒、カクテル、ワイン、サワー類を網羅する。しかも、焼酎は薩摩宝山、黒霧島、黒丸(芋)、八重丸(芋)などが飲める。

一番高いコース、といっても4200円だが、それになると富乃宝山、赤霧島、八海山など、酒好きにはたまらない銘柄酒までが飲み放題の対象となる。このコースは宴会を盛り上げる「枝豆のつかみどり」でスタートして、サラダ、お造り7点盛り、野菜串焼盛り合わせ、揚げ物盛り合わせ、宮崎産串焼き盛り合わせ、鶏のぶつ切りなべと続き、雑炊セット、宮崎産マンゴーのアイスで締める。

具満たん 水道橋店オーナー
田口雅之氏

繰り返すが、東京都心でこのボリューム、この内容、この価格はかなり貴重だ。そして、50名という人数が一同に集まることができる居酒屋は、水道橋駅周辺に2,3軒しかない。


オーストラリアで飲食店を2年間経営

「具満たん」は2008年2月4日にオープンした。オーナーは田口雅之氏。37歳。がっちりした体格の体育会系。さわやかさと飄々とした相反するような雰囲気をもっている経営者だ。

この店舗は田口氏にとって5店舗目となる。すべてがうまくいったわけではない。

「若い頃はヤンチャしてましたからね〜」と自らを振り返る。
彼は10代の時、オーストラリアに渡った。ワーキングホリデー、いわゆる「ワーホリ」でゴールドコーストの日本料理店で働いた。本格的な和食の店で、厳しい親方のもと調理のいろはをここで習得した。

当時日本はバブルの真っ只中。日本からの仕送りが月に50万、100万という日本人学生も周囲にはザラにいた。
ワーホリも終わろうとしている頃、知り合いから声をかけられた。
「300万貸すから飲食店をやってみないか」

異国ではじめての飲食店経営。食材の調達がしやすく、簡単に調理できるものを・・・とファーストフードスタイルで提供する店にした。
メニューは牛丼、ラーメン、カレーなどで4〜5ドル。夜にはカラオケタイムを作った。

昼夜となく店はお客で賑わい、利益はかなりあがっていたが、2年経つ頃、オーストラリア政府のビジネスビザに対する方針が変わり、退去をよぎなくされた。すでに開業のための借金は完済しており、儲けを関係者で分けても300万円ほどが手元に残った。
このとき、田口氏、若干22歳。

オーストラリアに行く前、警備会社に1年ほど勤めていたが、日本に帰国して会社員に戻るつもりはなく、自分で飲食店を経営することしか考えていなかった。
しかし、オーストラリアでファーストフードを経営したのと日本では勝手が違う。飲食店経営に必要なノウハウを得るために、東京・新橋の居酒屋、割烹、すし屋などの厨房で3年間修行した。その後友人と共同で飲食店をはじめたが、半年ほどでやめた。まだ経験が足りない・・・。今度は大手居酒屋チェーン店に就職した。料理以外の部分、ホールでの人の使い方から販促のやり方など、飲食店に必要な経営面を学んだ。

「あの頃は真っ暗闇の中を手探りしながら無我夢中で進み、とても大変でしたよ」と田口氏感慨深げに話す。
と同時に、「自分が日々成長してくことを実感できた」時期でもあったそうだ。


居酒屋を軌道にのせるために外国語をマスター

田口氏27歳のとき、満を持して自らが店舗オーナーとなる居酒屋をはじめた。

場所は東京都新宿区の大久保。山手線の駅があるが、治安はあまりよろしくない。警察が出動する騒ぎは日常沙汰で、田口氏が傷害事件の現場を見たのも1度だけではない。そんな街の、しかも風俗店が立ち並ぶエリアの地下に、彼は出店したのだ。

「なんでそんなところに出店したの?」 誰しもそう思うだろう。
なにも家賃が安かったからではない。彼がそこを選んだのは、大手企業の本社ビルと事務センターのビルのちょうど中間地点にあったからだった。2つのビルをあわせて5千人にものぼる社員が、その店の前の通りを行き交っていた。「ここだったらいける!」彼は確信していた。しかし、思ってもみないことがおこった。店舗のオープン日前日、その企業が引越ししてしまったのだ。周辺の調査は入念にしたが、引越しまでは気がつかなかった。

オープンしてから2、3ヶ月の間、売り上げがゼロという日が何日もあった。

彼は考えた。「これでは開店休業状態だ。なんとかしなくては。どうしたらいいんだろう?」

街を歩く人々は、一見するとわからないが、どことなく日本人とは違う。外国人が多いということは聞いていたので、区役所にいって調べてみた。
すると、なんと韓国人と中国人が8割を占めていたのだ。特に居酒屋を利用するのは韓国人が多いようだった。
そこで彼は韓国語を習い始めた。しかもその地域にネットワークをもつ韓国人と友達になり、日常会話を教えてもらった。外国語学校で習った日本人ならば決して使わないようなスラングやジョークをたくさん覚えた。韓国人の友人は、そのまた友人を引き連れてきてくれた。「おもしろい日本人がいる飲み屋で、おいしい日本料理を食べよう」と紹介されるようになっていった。

固定客がついたのは、なにも彼がヘンな韓国語をしゃべれるようになったからだけではない。
食材にもこだわった。当日に使い切れなかったものは廃棄した。焼き鳥は少し大きめの肉片にして串にさしたところ、大人気になり、同店の看板メニューとなった。
「あの店は安くておいしい」。
そんな口コミが韓国人のネットワークに広がった。

大久保という土地柄で、なかば強制的に学んだ韓国語を通じて、彼は韓国人のネットワークに入り込んだ。 そして、そのネットワークは今も彼の店舗経営を支えている。たとえば、彼の店で働いているアルバイトは韓国人が多い。韓国人を通じてインターネットでアルバイトを募集すると、応募の電話はひっきりなしにかかってくる。人材には困らない。

大久保という特殊なエリアで飲食店経営が難しいことは、業界の一部では有名だ。
彼はそれを知らずに店をはじめ、そこで8年間飲食店を続けた。
8坪で家賃は13万ほど、ほぼ常に満席の状態で1日3〜4回転、売り上げは月250万円ほどになっていた。

大久保の店をはじめて2年がたったころ、2店目を出店した。新宿から20分ほどの下高井という駅から少し離れた居酒屋であったが、周囲には学生が多く、ここも繁盛した。具満たんの大人気メニューのひとつである「枝豆のつかみ取り」は、学生をターゲットにここで考え出されたメニューだ。
キャッチコピーは「1個でも1万個でも500円」。
遊び心もわすれない。


店舗そのままオークションで、都内駅前立地の店舗を落札!

今から2年ほど前、大久保の店舗を支えてきてくれたメンバーの一人が辞めた。彼なしでは店舗の継続は難しい。やむを得ず大久保の店舗を閉め、下高井戸に1本化した。
しかし、半年も経つと、彼はいてもたってもいられずまた新たな店舗を出店すべく物件を探しはじめた。都内の不動産屋をまわりはじめたが、駅前立地はことごとく大手チェーン店の手に握られていた。1年半ほどの間に興味をもった店舗が4店ほどあり、不動産屋とも交渉をしたが、あとから来た飲食チェーン店にすべて持っていかれた。

店舗探しと並行して人材募集を進めていたところ、たまたま良い人材を多数採用できた。研修として下高井戸で働いてもらっていたが、1店でそれほど多くの人材は必要なく、短時間シフトとなってしまった。「このままではマズい」、と気を引き締めなおして店舗探しに力をいれた。

店舗から帰ってクタクタに疲れながら、慣れないインターネットに向かって情報を探していた真夜中に「店舗そのままオークション」サイトを見つけた。
「店舗そのままオークション」サイトは会員制であったので、すぐに会員登録をして店舗を検索したころ、すぐに見つかった。まさに自分が探していた水道橋で、居酒屋の物件が、店舗そのままオークションのサイトにあったのだ。駅からの距離、広さ、「これだ、これしかない!」と思った。価格のことは気にしなかった。いくらでもよかった。どうしても水道橋で出店したかった。

早速物件紹介のページにあった「内覧」のボタンをクリックした。すると翌朝、店舗そのままオークションの担当者からTELがあり、内覧の日を確定した。店舗を実際に見たところ、イメージどおりだった。
その場で店舗そのままオークションの担当者に伝えた。
「ここでやります!オークションに入札します」

この店舗は人気エリアの居酒屋であったので、内覧者は何人かいたが、実際に入札をしたのは2人。
何度か競り合った後、田口氏が800万円で落札した。

2008年2月4日、田口氏にとって5店目となる飲食店「具満たん」がオープン。

前店舗の明け渡しから、わずか1週間ほどのことだった。

1週間の準備で新しい店をオープンできたのはなぜか?

店舗そのままオークションは、店舗造作の部分をオークションで落札する。
前店舗のオーナーがどのような物を残して退店するか、
新しいオーナーがどれぐらい改装して開店するか、
はそれぞれの店舗によって異なる。

この店舗の場合は、内装や厨房だけでなく、テーブル椅子なども譲渡の対象となっていたが、田口氏は前オーナーと交渉して、食器や器材、そしてレジにいたるまで、残せるものはすべて残してもらった。だから、田口氏が手を加えたのは、看板・メニュー類と、最低限の厨房器材のみ。店内にはほとんど手を加えなかった。

2階はテーブル席と座敷席、3階は座敷のみで50名ほどの大宴会が可能。

看板を見て新しい店だと思って入ってきたお客から、「ぜんぜん変わってないね」と言われたこともある。
ただ、内装は変わっていなくても、メニューは宮崎地鶏を前面に打ち出している。前店舗のリピーターも、宮崎地鶏を気に入って「また来るよ」といってくれるようになった。

居抜き店舗のメリットを最大限に生かしたスピード開業だった。


低投資出店を実現、夢は更に広がる

開業準備期間1週間、開業費用計1000万。
スケルトンから開業したら、内装工事費だけでなく、工事期間中の家賃もかかるはずだ。

開業資金としては4000万円は下らなかっただろう。

店舗そのままオークションを利用して低投資出店を実現した田口氏は、その分食材にこだわった。
同店のメニューは、焼き鳥類のほか、
・宮崎地鶏もも肉のたたき 600円
・宮崎産馬刺し 700円
・鶏・ネギ・ポン酢 680円
・鶏キムチチャーハン 780円
などなど。
都心一等地でこの単価は低価格帯に属する。それでありながら、ボリュームもある。そして、品質も高い。

同店の「宮崎地鶏」は、田口氏の長年の飲食店経験とそのネットワークから選りすぐった業者から仕入れている。宮崎県都城市の養鶏場に強いルートをもった業者だ。都城市は内陸部にあって新鮮な魚が入りにくいため鶏肉文化が発達し、おいしい鶏肉が開発されたという。昨今の宮崎ブームで品薄となっている宮崎地鶏や馬刺しだが、同店は本物を確実に仕入れることができる。
魚は築地市場に田口氏みずからが仕入れにいく。

素材には徹底的にこだわる。素材がだめなら、料理がだめになる。素材がよければおいしい料理ができる。 半調理品などは使わない。コストが高くなるからだ。ぬかづけなども同店自家製。
そして、カード決済は扱わない。手数料分が単価に影響するはずだから。

かけるべきところにコストをかけ、省けるところは極力省く。
良いものを低価格で提供する。田口氏のポリシーは明快だ。

同店はランチ営業もしている。夜の営業時間は夕方4時から翌朝4時。周辺には出版業界も多いので、深夜の需要もあるという。
まさに朝から晩(明け方?!)まで働き、それでいて遊びもちゃんとしているというまさにバイタリティーの塊のような田口氏の夢は

日本で居酒屋10店展開、そして、アメリカ進出

この夢を実現するために、水道橋店がもうしばらくして軌道にのったら、次の増店にむけて動き出すという。

留まることを知らない田口氏。プライベートの夢は「宇宙旅行」だ。

2008年4月17日

【店舗概要】

店舗名: 具満たん 水道橋店
所在地: 〒101-0061  東京都千代田区三崎町3-7-12 原田ビル2・3F
アクセス: JR線水道橋駅西口徒歩1分、都営三田線水道橋駅徒歩5分
TEL: 03-3221-1194
FAX: 03-3221-1194
URL: http://gu-mantan.jp/
定休日: 無休

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