居抜き店舗の【店舗そのままオークション】 HOME  > 開業支援  >  コラム 一般家庭の食卓にも並ぶ防災備蓄用の“缶パン”

一般家庭の食卓にも並ぶ防災備蓄用の“缶パン”

長年、非常用食料として親しまれてきた乾パンが世代交代を迎えている。主役の座に躍り出てきたのは「パンの缶詰」。味や柔らかさもさることながら、軽量であること、お年寄りや子供でも缶切りなしで手軽に食べられることが人気の理由だ。


缶詰の中から焼きたてのふっくらパンが出てくる

代表取締役
稲葉恵三
(いなば・けいぞう)

パン・アキモト社長
秋元義彦 (あきもと・よしひこ)

1953年栃木県生まれ。法政大学経営学部卒。都内のパン屋で2年間修業したのち秋元ベーカリーに入社、96年から現職。

缶のプルトップを軽く引いてふたを開けると、甘い香りとともに、薄紙に包まれたパンが現れる。包み紙の中にあるパンは、まるで焼きたてのようにふっくらしている。食べると、まるで焼きたての味がする。賞味期限は種類により1〜3年。この「パンの缶詰」を開発したのはパン・アキモト(栃木県那須塩原市)で、「乾パン」に代わる非常食として売り出した。

いずれも明るいイラストや写真で、商品特徴を明確にあらわしている。1缶当たり約100g入り、350〜370円

現在、「パンの缶詰」はレーズン入りのものや、「チョコクリーム」「粒々イチゴ」「はちみつレモン」など11種類。保存性の高さはもちろん、その味と食感が話題を呼び、家庭や自治体などを中心に年間約200万缶を販売している。

缶いっぱいに膨らんだふっくらしたやわらかいパン


阪神淡路大震災を教訓に食感と保存性を両立したパンを開発

「パンの缶詰」は防災備蓄用として阪神淡路大震災の翌年(96年)に発売した。震災時、パン・アキモトはすぐに支援物資として大量のパンを現地に送ったものの、一部のパンにカビが生えるなどで被災者の手に渡ることなく捨てられてしまった。その教訓を生かして保存性の高いおいしいパンづくりが始まった。

しかし、焼きたてのパンのようなふっくらとした柔らかさを保つためには、ある程度の水分が含まれていなければならない。一方、保存性を高めるためには乾燥させなければない。この相反する食感と保存性を両立させることが、最重要課題だった。

その難題を解決したのは、秋元義彦社長が考案した特殊製法だ。パン生地をスチール製の缶に詰めて、そのままオーブンで焼き上げると同時に缶の内面を殺菌する。でき上がった直後に脱酸素剤を入れて密封。脱酸素剤が缶の中の酸素を抜き、菌の繁殖と酸化による品質の劣化を防ぎ長期保存が可能となった。

発売当初から売り上げが順調だったわけではない。「震災は自分には関係ない、非常食など必要ない」「パンは焼きたてでなければ美味しくない」「しょせん、缶詰は缶詰」。そんな固定観念が流通を拒んだ。

ヒットの契機となったのは04年。新潟県中越地震の発生により、日本中で「震災は他人事ではない」という危機感が募った。企業や自治体からの引き合いが一気に増加。おもだった非常用食品は製造が追いつかないほど売れた。


年間販売個数の3分の1が非常食以外の食品として売れる

開発から約10年が経過した今もなお販路が拡大し続けている。実は、現在の年間販売約200万缶のうち、3分の1が非常食以外に買われているという。 「私はパン職人ですから、備蓄するだけでなく、やはりおいしいパンとして楽しく食べてほしいという思いがあります」(秋元社長)

沖縄では黒糖、紅芋、トロピカル味を、地元・栃木では抹茶、バター、ブルーベリー味を地域限定品として売り出し、土産物としての需要も高まっている。さらに、JRの駅売店に卸したり、企業のOEM(相手先ブランドによる生産)商品として受注したりして購買層を大きく広げた。

需要急増に伴い、本社工場とは別に、05年7月には沖縄の特別自由貿易地域に工場を設立し、海外進出も視野に入れている。07年からは沖縄米軍基地内のマーケットでも販売を開始、好評を得ている。「台風で外出できない時やアウトドアのレジャーに持っていく時のために買われているようです。今、海外向けに、量が2倍のダブルサイズも作っています」(同)


大手デパートと共同で高級品の開発を進行

進化や変化、改良に向けて努力を惜しまないのが秋元社長の信条だ。「缶の切り口が危険かもしれない」と気づいたときは、約3000万円を投じて缶の切り口に二重の安全装置を施せる製造ラインを整えた。さらに「賞味期限切れになった商品を引き取ってもらえないか」という自治体からの要望に応じるため、下取りシステムも始めた。

企業と共同開発した商品は、味の新しさだけではなく話題性にも富み、受注も増加し続けている

賞味期限が切れる1年前に、自治体などで大量に買い置きされているものを下取りし、代わりに新商品を販売・納品、それら下取り商品を海外に送り、飢餓地域の援助に役立てている。

現在、大手デパートとの間で、高級パンの缶詰の共同開発も進めている。「健康を意識して低カロリーパンの缶詰の開発も考えているんですよ」と秋元社長は楽しそうに語る。まだまだ可能性を秘めた「パンの缶詰」。秋元社長が目標とする年商6億円を超える日もそう遠くないはずだ。

【企業情報】
パン・アキモト
本社 〒329-3147 栃木県那須塩原市東小屋295-4
設立 1947年
資本金 3500万円
売上高 4億3000万円(06年度)
従業員 55人
事業内容 パン・洋菓子の製造・販売(小売および卸売り)ほか
URL http://www.panakimoto.com/

このページのTOPへもどる ▲